007. 昼 寝

背中に降り注ぐ柔らかく温かい光で目覚める。

「ん…今何時…?」

机に突っ伏して眠ってしまっていたらしい。時計を見ればすでに午後2時を回ろうとしている所。

ここ暫く新しいジェットフライヤーの開発に没頭していて、ろくに睡眠をとっていなかった。

うーん、と伸びをして窓を開け外を見る。

気持ちのいい風が吹いている。

「いい風だわぁ…」

ほほを撫でる風が心地いい。

日差しもやわらかく、ぽかぽかしていてなんとも気持ちがいい。

ふと庭に視線を落とすと木陰から大小、二人分の足が見える。

夫と息子だ。

天気が良いから外でトレーニングしてそのまま昼寝モードになったに違いない。

ぽかぽかの陽気、部屋で過ごすのはもったいないし、どうせ煮詰まっているし気分転換も必要だ。あの二人のように木陰でのんびりするのも悪くない。

「あたしも行こっと♪」

そうと決まればさっさと開発室を後にして庭に向かう。

庭に出て、お目当ての木陰まで行けば、そこには幹に寄りかかり、両足投げ出した格好でぐっすり夢の中であろう、夫と息子。二人とも気配には敏感なハズだけど、微動だにしない。よく見ればトランクスは口が緩んでよだれが垂れそうな勢いだし。ベジータも熟睡しているように見える。

「んー…」

二人のほっぺたをぷにぷにしてみたけど。トランクスはまだしも、ベジータも起きないなんて珍しい。まぁ、いいか。せっかくだからあたしもここで昼寝しよう。

そう思いって木陰の芝生の上に身体を投げ出し、まくら代わりにベジータのももにそっと頭を乗せてみる。起きちゃうかな、と思ったけど、規則正しい寝息のまま。上を見上げれば緑の葉っぱの隙間から所々見える青空が綺麗。頬を撫でる風は気持ちいいし、ほんと、昼寝日和だわ。












足に重みを感じて目が覚めた。

目を開けて、確認してみれば両足に頭。

妻と息子が人の足を枕にくぅくぅと寝てやがる。

しかもご丁寧に二人ともよだれを垂らして、だ。

「……」

フゥ、とため息が出る。それにしてもなんて緊張感のない。

まぁ、それだけ平和だということか。

「おい…」

起きろ、と言い掛けてやめた。そういえばこいつは最近ラボに詰めていてろくに寝ていないハズだ。しかたない、ベッドまで運んでやるか。

ブルマを起さないようにトランクスだけ先に起す。

「おい、トランクス起きろ…」

アホ面して寝ている息子のほっぺたを引っ張る。

「?!いたっ!なにするんだよぉ…」

ほっぺたを擦りながらトランクスが起きる。

「あれ?ママ?」

「静かにしろ。起きる。」

トランクスが慌てて口を押さえる。

そっとブルマを抱きかかえ、息子を促す。

「戻るぞ…」

「目が覚めたらママも居てビックリしたよ、ボク。」

小声でぶつぶつつぶやいている。

確かに、自分も気がつかなかった。過去ではありえない事。

いつでも神経を尖らせ、寝首を欠かれないように気を張って。

たとえ眠って居る時でも敵意があろうが無かろうが近づいた者はタダでは済まなかった。

こちらが眠っているときに不用意に近づけば反射的に攻撃していたのに。

ソレがどうだ?

そうか、オレも結局この平和の中での暮らしに馴染んでいたのか。

コイツとならこの生ぬるい平和の中で生きていくのも悪くはない。

「あっ!おばあちゃんだ!」

トランクスが建物の入り口で手を振っているコイツの母親に気がつく。

建物の中から甘いにおいが流れてくる。

「きっとおやつだ!パパ、ボク先に行くね!」

においにつられた息子は足早に建物に戻っていく。

小走りなその小さな後ろ姿を見ながらふと思う。

多分、こういう事がこいつらの言う幸せなんだろうな、と。




111007

ブウ編後って感じでしょうか。
少しずつベジータはブルマやトランクスの影響を受けて、
地球式の生き方に馴染んでいくんだろうな、と。

でもきっと、ベジータさんはブルマが一緒にいるならどこでも生きていけると思いますが。

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