010. 家族の食卓

なんでもない日常がこんなにも愛おしいものだとは思いもしなかったの。

あの日まで。

こうして家族みんなで食卓を囲んでいられるのはなんて幸せなんだろう。

一度はこの手の中から滑り落ちてしまったけれど、こうしてまた手の中に戻ってきた。

食卓いっぱいに並べた食事を次から次へと胃袋に収めていく夫と息子。

見ていて気持ちがいいくらい綺麗に無くなってゆく。


「あら…付いてるわよ…」


珍しく頬に食べこぼし。

そっと指でつまみ自分の口に運ぶ。


「…っ!子供がみてるだろう…」


え?、と夫ベジータを見ると頬がうっすらと色づいている。


「子供が見てる、ってそんな変なことしてないわよ?」


クスクス笑いながらますます色づいていくベジータを見る。

些細なことかも知れないけど、こういうやり取りが出来るのは本当に幸せなこと。

ねぇ、ベジータ。

あなたが私たちを愛しているように私もあなたを愛しているわ。

だからいつまでもこうして家族みんなで食卓を囲みましょう。

この先子供が巣立っても二人でこうして食卓を囲んで。

そのうち孫なんか交えて食卓を囲むのも悪くないわね。


私の元に戻ってきてくれてありがとう。

何者にも変えがたい幸せを守ってくれてありがとう…






111128

ブウ編後。ブルマ視線です。
なんでもない日常がどれだけ尊いものなのか。一度失ったからこそ、二度と戻らないと思っていたからその尊さがより感じられるのです…

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