282. 壊れた戦闘服

帰ってきたのはあいつではなくて、ボロボロになった戦闘服だった。

改良に改良を重ねてきた自信作だったのよ。

最後まであいつと共にあったのに、その命を守ってはくれなかった…

とても強く、誇り高かったあいつ。

妥協を許さず、常に最高を求めて。

その要求に答えて二人で作り上げた戦闘服だったのに…

どんなに嘆いても失ったあいつはもう、戻っては来ない。



「ベジータ…」



壊れた戦闘服を抱きしめ、つぶやく。


「あんた、一緒にいて少しは幸せだった?」


血の匂いと微かにあいつの香り。


「私は幸せだったわよ…」


側にはすやすやと眠る息子、トランクス。

生き延びてみせるわ、この子と。

まだ希望は失われた訳じゃない。

孫くんの忘れ形見とベジータ、あんたの忘れ形見。

きっと彼らが何とかしてくれる。

僅かでも希望が残っている限り、決して諦めないわ。


「ね、ベジータ。」


精一杯、生きるから。あんたに笑われないように。

ブルマは真っ青な空を見上げる。

その瞳から一粒の涙がハラリ、と零れ落ちた。





110929

未来編、死にネタ。ブルマ視点。
現代編と同じく、ベジータの本質は変わらないと思っています。
どんな形であれ、ブルマを、トランクスを愛していた、と。

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