精 霊 祭   <前編>
それは夏の蒸し暑いある日。

わたしたちはクエスト(?)の半分を終え、シルバーリーブへ戻る途中。

クエスト、と言っても、実はオーシのお使い。
エベリンまである物を運び、
それを交換してもらい、シルバーリーフまで持って帰る、
と言う、私たちにはもってこいのものだった。
しかも報酬がなかなかよかった。
これだけで1万Gの報酬が貰えるんだって。
これでみすず旅館のツケが・・・・。

もちろん、何を運んだのか知らされていない。
(秘密なんだって。エベリンまで運んだ荷物は厳重に封されていた。)
ただ、危険のまったく無いものだと言うことだけは知らされていた。

無事にエベリンに物を運び、今持っているこれ、
なにやら怪しげな袋と交換したのだ。

中は見えないようにしっかりと封がされていた。

「けっちーなー。見るくらいいいだろうに。」
ぶつぶつ文句言っているのが、盗賊のトラップ。
その怪しげな袋を透かしてみたり、振ってみたりしている。
赤い髪が印象的だ。

「まあ、いいじゃないか。今回のクエストも無事終わりそうだし。」
まあまあ、とトラップをなだめているのが、
トラップと幼馴染で戦士のクレイ。

「ぱぁーるう・・・おなかぺっこぺこだおう!」
この子は魔法使いのルーミィ。エルフ族。
ふわふわのシルバーブロンドにサファイアブルーの瞳。バラ色のほっぺた。ホント、かわいい。
大きくなったら美人になるんだろーな。そんな事を考えていると。

「パステルおねーしゃん?」
どうしたデシか?とルーミィと遊んでいたシロちゃんが黒い瞳でわたしを見上げる。
「ううん、大丈夫だよ。ちょっと考え事してただけ。」
シロちゃんて本当、かわいいなぁ〜。思わずきゅっ、って抱きしめる。
こんなにかわいいけど、彼はれっきとしたホワイトドラゴンなのだ。
ぜんぜん怖くないけどね。

あとは農夫のキットン。
実は彼、キットン族の王家の血筋らしい。
ぜんぜんそんな風に見えないけどね。

そして運搬業のノル。巨人族なの。
いつも私たちパーティの荷物を大八車に乗せて運んでくれる。
彼は寡黙でとてもやさしくて、いい人。
そしてなんと!動物たちの言葉がわかるんだって。すごいよね。

最後にこの私、詩人でマッパーのパステル・G・キング。
詩人、と言っても、自分の体験記などを書いて雑誌に掲載してもらったりする。
(これが結構評判がいいらしい。うれしいよね。)
そして兼任でなぜかマッパーでもある。
方向音痴なんだけどね。そのことでいつもトラップにからかわれたりしている。

計6人と1匹のパーティ。
私の大切な仲間たち。



エベリンの帰り道。
ズールの森を半分くらい進んだところで。
日も暮れてきてしまい、仕方ないので、野宿をすることにした。
なれている森でも夜はあまり動かない方がいい。

「ルーミィじゃないけど、ハラ減ってきたな・・・。」
「とりぁーもおなかへったぁ?」
ルーミィはトラップを見上げた。
「うーん・・・・じゃあ、食事にしよっか!」
と私が言うと。
「へへっ。まってました!」
「ごはんだぁ!」


みんなで焚き火を囲み、食事をとる。
今日はミミウサギの串焼きとパンとスープ。
ささやかでもみんなで食べる食事はおいしんだよね。
こんなときちょびっと幸せ感じるんだよなぁ。



薪のはぜる音で目が覚めた。
横に寝ているはずのルーミィの姿がない。
「ルーミィ?」
呼んでみる。返事がない。
「・・・・・・。」
何処に行ったんだろう。

ぐるりと周りを見渡すと。
当然、トラップとキットンは眠っている。
よく見れば、薪の番をしていたクレイとノルも眠っている。
この二人にしては珍しい。

・・・そしてやっぱりルーミィの姿はない。

もう一度呼んでみる。
「ルーミィ・・・」やっぱり返事はなかった。

・・・どうしよう・・・。捜しにいかなきゃ・・・。
急に不安な気持ちがむくむくと起きてきて。
いてもたってもいられなくなった。
月明かりのなか、皆を起こさないよう、そっと起き上がり、
探しに行こうと思ったそのとき。

むんずと腕をつかまれた。
「きゃっ!」
・・・思わず悲鳴がでてしまった。
おそるおそる振り向くと。
そこにはさっきまで寝ていたはずのトラップがいた。
「ったく・・・。どこにいくつもりだ?」
少しあきれた顔でたっていた。
「どこって・・・ルーミィを捜しに・・・。」
そこまで言いかけたとき。
「ばぁか。なんでおれたちを起こさないんだ?」
どうやら怒っているみたい。
「おまえが迷子になったら誰が捜すことになると思っているんだ?」
こんな夜に迷子になられたらたまったもんじゃない、とぶつぶつ言っていた。
・・・・そんなもんだよね。

「おら!起きろよ!」
なかなか起きないキットンを蹴飛ばしている。
「そんな・・・乱暴に起こさなくても・・・。」
「いーんだよ。それよりおまえも起こすの手伝えよ。」
そういわれてクレイに声をかける。
「クレイ、起きて。ルーミィがいなくなっちゃったの。」
と体をゆするが起きない。絶対すぐ起きると思ったのに。
「トラップ。起きないよ。」
と私が言うと。
「こっちもだ。」
ノルを起こそうとしていたトラップも困惑している。

「いったいどうしたんだろうな。」
不思議そうに首をかしげる。
「ルーミィ捜しにいかなきゃ。」
「う〜ん、こいつら起きねぇしなぁ。」
さて、どうするかな。とのん気だ。
「ねぇ、トラップ。こうしている間にルーミィに何かあったら・・・・。」
急に悲しくなってきて。涙がこぼれる。
「お、おい、泣くなよ!・・・だーっ、解った。二人で捜しにいこう。」
残りの連中に手紙置いてけよ、と言われて慌てて置手紙を書いて、クレイの側に置く。
もちろん、風で飛ばないように石で抑えて。

「おら、行くぞ。」と手が差し伸べられて。
「なに?」思わず聞いた。
「・・・・迷子になられたら困るんだよ。ほら!」
もう一度手が差し伸べられて。今度は何も言わずにその手を握る。
「わかりゃ、いいんだよ。」ぷいっ、とそっぽを向く。
・・・おや?なんかやさしいぞ。変なの。ま、いいけど。


とりあえず二人で捜すことにして。
ポタカンの光を頼りに森の中に入った。


しばらくして。
ふと空を上げると。満月だった。
「ねぇ、トラップ見て!綺麗だよ!」
「ん?」
私が指さす方を見上げる。
「ああ、満月だな。」
・・・それだけ?つまんないなー。
「そんなことよりルーミィ捜す方が先だろ?」
「わ、解ってるわよ・・・。」
そうだった。ごめん、ルーミィ。
「ならいいけど。」
ニヤニヤしながら私の顔を覗く。

・・・やっぱりヤナやつ。

そんなたわいもない会話をしつつ、ルーミィの姿を森の中に捜す。
「見つからないね。」
ほんと、何処行っちゃったんだろう。
「ルーミィの足ならそんな遠くには行かないはずなんだけどな。」

そんな会話をしていたとき。

青白い光が目の前を通り過ぎる。
「お、おばけ・・・」
「はぁ?おばけだぁ?」
トラップが呆れ顔で振り向く。
「い、いま目の前を青白い光が・・・。」
「んなばかな・・・・うわっ!」
トラップの目の前に突然例の光が現れて消える。
「な、なんだぁ?!いまの。」
周りをよく見てみると。
森のあちこちで青白い光が点いたり消えたりしていた。
「な、なんだろうアレ。」
「おれも解らん。見たことも聞いたこともないぞ。あんなの。」
「こんなときキットンがいたらよかったのに。」
「今はそんなこと言ってられないぞ。モンスターなら厄介だぞ。」
そ、そうだった。今はトラップと二人。
もし、アレが人を襲うようなモンスターならはっきり言ってやばい。


息を殺して様子をうかがう。
しかしその光は一向に襲ってくる気配もなく。
よく観察してみると。どこかに向かっている。
「ねぇ、あの光、どこかに集まっているみたい。」
「だからなんだよ。」
「うん、勘なんだけど、あの光、追いかけてみよう。」
「はぁ?何言ってるんだ?ルーミィ捜さないのかよ。」
「そうじゃなくて。なんかあの光が関係あるんじゃないかと思って。」
「・・・しかたねぇなぁ。反対したって行くんだろ?」
さすがトラップ。よく解っている。
「それじゃ追いかけるぞ!」
私たちは光を追い始めた…



真夏の夜の夢、ルーミィ編です。
しかーし。トラパス色強し。さて。これからどうなるんでしょうねv

2004.8.29 再アップ