16 / 涙
少し前から雨が降り出した。

決して強い雨脚ではない。

 

 

「あの子が泣いているわ…」

母は誰にともなくつぶやく。

「側に行ってやれ…恋愛の先輩なんだろ?」

読んでいる新聞から目を離さずにつぶやく。

「!あの時の聞いていたのね、あなた。」

軽く夫をにらむ。

「たくさん泣かせたからな、俺は。」

ふっ、と優しい笑みを浮かべて、妻は夫の横にちょこんと腰を下ろす。

「ふふっ。少しは気にしてくれたの?嬉しいわ。それにね、見て。」

妻が窓を見やる。

そこにはさっきまでの陰気な空はどこへやら。

からりと晴れ渡りお日様が燦々と照っていた。

 

「どうやら私の出番はないみたいよ。」

パチンとウインク。

 

そして少しだけ不機嫌になった父は。

「…まだ嫁にはやらん!」

とつぶやいた。




040202
ときめきトゥナイトな感じです。
言わずと知れた蘭世と俊が愛娘、 愛良を心配しての図、です。