18 / 砂糖菓子
あまーいあまーいひととき。

こんなお菓子、あなたは知らないでしょう?

きっと食べてびっくりするでしょうね。

そしてきっと。

夢中になるんじゃないかしら?

こういうの、好きそうだもの。

 

でもきっと最後に食べて片付けるのはあたしとトランクスの仕事かもね。

ま、いいわ。少しは息抜きも必要なんだから!

 

 

 

 

<砂糖菓子>

 



 

 

ぶつぶつとつぶやきながら歩いている彼女の手に握られている袋には
パステルカラーの小さなふわふわのまぁるい玉が入っている。

彼女が向かった先はいわずと知れた重力室。
使用中のランプが点っていたけど外部コントロールで緊急停止をかける。

ものすごい勢いで飛び出してきたのは彼女の夫であるベジータ。
そしてブルマの存在に気づくと、

「おい、また壊れやがったぞ!とっとと直しや…ぐっ。」

ベジータが全て言い終わらないうちに手にしていた袋の中身を彼の口の中に放りこむ。

「おいしい?」

口をもごもごさせている夫に詰め寄る。

「なんだ?これは…」

まだ不思議そうに口の中に残っていないか確認するかのようにもぐもぐさせている。

ふふんvとブルマは軽く笑みをこぼし隙をついてまた同じものを口に放りこんでやる。

 

ポイッ。

もぐもぐ。

 

ポイッ。

もぐもぐ。

 

「すぐなくなるぞ?ブルマ、なんだ?これは。」

ふっふっふ。かかった、かかった。ブルマさんの作戦勝よ。内心ニヤリとしつつも。

「うふ。どう?不思議な食べ物でしょう?作るところ、見たくない?」

返事はなかったがベジータの眉がピクリ、と動くのを見逃さなかった。どうやら興味はある様子。

「こっちよ、ベジータ。」

重力室の横を抜け奥の小部屋へと案内される。

「あれよ。」

ブルマがそう言って指差すほうには比較的小さな機械が置かれていた。

「なんだ、あれは?」

「あれで作るのよ。見てみる?」

ブルマはさっさとその小振りな機械のところに行くとスイッチを入れる。

 

ブゥゥゥ…ン…

 

モーターが回る音が聞こえてくる。

「ほらほら、早く。こっちにきて。」

彼女は手招きして夫を呼ぶ。それに促されるようにふらふらと側にやってきた。

「はい。これ。」

「?」

渡されたのは1本の棒。

「いい?見てて。」

そういうとブルマは機械の真ん中にぽっかり空いている穴になにやら白いものをサラサラと入れた。

するとどうだろう。今まで何もなかった空間に白い細い糸が甘いにおいと共にふわっと広がった。

「ああっ。ダメよ、急いで急いで。」

ブルマは先ほど棒を握らせた手を取ると器用に
その棒に雲のように広がっていく糸をくるくると巻き取っていく。

「ほら、できた。食べてみて。」

ベジータはこんもりと棒に巻きついた其れを恐る恐る口に運ぶ。

 

ぱく。

 

しゅわ、と口の中で甘さだけを残してすぐに溶けてしまう。

「何なんだ、これは…?」

少々困惑気味の表情でブルマに問いかける。

「これはね、綿あめっていうのよ。元はザラメっていうお砂糖なのよ。
それを溶かして細い糸状にするの。
そうするとね、ほんの少しのお砂糖がこんなに増えて雲みたいになるのよ。」

やってみる?とブルマはいたずらっぽく笑い、新しい棒とザラメをベジータに渡した。

「ここにザラメを入れるの。
そうするとこの周りに糸状になって綿飴ができてくるからこの棒に巻き取れば出来上がり。どう?」

「簡単だな。」

フン、と鼻を鳴らしブルマから受け取ったザラメを言われたとおり綿飴製造機の投入口に入れる。
ちょっと間をおいてなるほどふわふわ白いものが回りにでき始める。

「ほらほら、ベジータ早く巻き取らないと…」

ギロ、とブルマを一睨みして綿飴を巻き取る作業をはじめた。

 

が、しかし。

 

「…なんでこうなるんだ?」

ベジータの綿飴一号は先ほどブルマが作ったものとは違いペタッ、とつぶれている。

「あのねぇ…綿飴がふちに付いて固まってきてからとっても遅いのよ…
まだふわふわしている間に巻き取らないと…」

意外とタイミングが難しいのよ、とブルマはベジータに教えた。

「おい。ありったけのザラメと棒を置いていけ。」

その言葉を聞き、ブルマは内心ほくそえみながらも言われたとおりザラメと棒を準備する。

「ここにおいておくわよ。」

その言葉に「おう、」とベジータは返事をした。しかし既に視線は綿飴二号に注がれている。
先ほど綺麗にできなかったのが少々気に食わないらしい。

そんな様子をみつつ、ブルマは。

「ま、ほどほどにね。私仕事に戻るわ。」

ブルマはとりあえず「ベジータを重力室から連れ出して身体に休息を与える、」という
目的を達成させたブルマは足取りも軽く仕事へと戻っていった。

それからしばらくの間、カプセルコーポの中には甘い香りが立ち込めていたらしい。






040421
幼い頃に良く見かけた綿飴の自販機。
20円入れるとふわふわと綿飴が出てくるんですよ。
自分で巻き取ると縁日のヤツみたいにうまくいかないです。
それでも楽しかったんだよね。