モーニング・コーヒー
午前の演習も終わり昼食も食べて午後の演習に入るまでの休み時間。
サクラがカカシに突然たずねた。

「ね、それそんなに面白い?」

「いきなりどうしたの?」

木に寄りかかって本を読んでいたがふと顔を上げてサクラを見る。

「だって先生いっつもそれ、読んでるじゃない?」

サクラの言う「ソレ」とは言わずと知れたいちゃパラのことである。

「んー、面白いよ?でもサクラにはちょっと早いかな?」

「そんなこと無いと思うわよ?だって結構面白かったし。」

「……結構面白かった?」

(結構面白かったって…オイオイ…いったい…)

「うん。面白かった。」

「…っていつみたの…」

「いつって…波の国で。」

だってね、任務が終った後、サスケくんもナルトもカカシ先生もぐったりして寝てたじゃない?だから暇で…と一生懸命言い訳を始めた。

そう。確かに。あのときサスケは初めて写輪眼を発現させたせいで。
ナルトも九尾の狐が漏れかかったせいで。そして自分は。
前回のように倒れるまでは酷くなかったが、それでもそうとう消耗していた。
それに比べ確かにサクラはそこまで消耗していなかったから回復も早かった。
まあ、暇になっても仕方なかったのだけど。

「ふーん…それで…?」

「それでって…あんまり暇だったから先生の枕元に置いてあったソレ(いちゃパラ上巻)、読んじゃったの…」

(…もしかして俺が悪い…のかな?でもなぁ。これ、未成年にはなぁ…)

手の届く所に置いていた自分が悪いのだと珍しくカカシは殊勝なことを考えていた。

「でもサクラ。この本は未成年は読んじゃだめなんだぞ?」

そう言って裏のマークを見せる。

「解ってる。本当はちょっとパラパラみて辞めるつもりだったんだけど…気がついたらヒロインに感情移入しちゃって…」

それにね、とサクラが続ける。

「未成年だとどうして読んじゃダメなの?すっごく素敵な物語なのに。」

「素敵って…どこが?」

(う〜ん…いくら上巻といえ、結構えっちいと思うんだけどな、俺はさ。男と女でこうも感じ方が違うのかね…。)

思わぬサクラの言葉にカカシはそう尋ねずにはいられなかった。

「え?!素敵じゃない!だってたとえばここ…。」

そう言うが早いか、カカシが持っていた「いちゃパラ上巻」を奪い取るとパラパラと本をめくり、あるページを開く。

「ね、先生、たとえばここ。」

そう言って見せられたページは言うなれば朝の風景。
恋人と朝を向かえてヒロインが白いシーツに包まって彼がもってきたモーニングコーヒーを飲んでいるシーン。
ふとサクラを見やれば、うっとりとした顔でそのページを覗いている。

「…サクラってもしかしてこういうのに憧れてるの?」

「/////やだー!先生ったら!」

顔をほんのりピンクに染めてカカシの背中をバシバシ叩いている。
別にサクラの力で叩かれても痛くも痒くもないのだけど。
そんなサクラを見て思わず、

(サクラとモーニングコーヒーもいいかもなー。)

などと考えている自分に思わず苦笑してしまう。

(俺、ちょーっとヤバイかもなー。)

そんなことを横の男が考えているとは露知らず。
サクラはあいかわらず本をパラパラめくり、
カカシに向かってここのシーンがいいだの、
熱弁を振るっていた。



「サーックラちゃん?」

「…なによ、先生。」

ニコニコしながらひょいとサクラを抱き上げてさらりと一言。

「ね、俺と一緒にモーニングコーヒー飲もうか。」

「ど、どういう…こっ…!」

サクラの言葉はカカシによってさえぎられる。そして何食わぬ顔で、

「こういう事v」

真っ赤な顔のサクラがようやく声を発する。

「/////////…なにすんのよー!」

「気にしない、気にしないv」

じゃ、とサクラをしっかりと抱きかかえるとカカシとサクラの姿はその場から消えていた。

辛うじてサクラの「なにすんのよー!この変態エロ教師ぃ〜!!!」という叫び声だけが木霊していた。






2001.3.14

5555キリ番(表サイトです。)をゲットしてくださったyukiさんに捧げます。
カカサクをリクエストしてくださいましたが、お望み通りの作品になったでしょうか?
ちょっと甘めを目指して見たのですが。

ちなみにこの後サスケとナルトはカカシとサクラが戻ってこなかったため、日がとっぷり暮れるまで待ちぼうけを喰らいましたとさ。
サクラちゃん…は。コレを読んでくださった方々のご想像におまかせいたしますv