不知火
「三代目…こちらにナルト来てますか?」

ひよっこりと扉の影から片目の男が顔を覗かせる。

「…何事じゃ?」

机に向かってなにやら作業していた手を休めて火影が顔を上げた。

「イエ、書類に目を通させようと思って部屋に行ったらモヌケのからだったんですよ…」

「で、ここにいるかと思って来たのか?」

「ハイ…なんだかんだ言って三代目が一番ナルトに甘いですからねぇ…」

「……うむむ。」

おもわね指摘を受け、思わず苦笑する。

「まぁ、急ぎじゃないんですけどねぇ…」

片目の男はのほほんと喋る。

「なに、おまえでも事足りるんじゃないのかね?」

仮にも五代目だろう?と言葉が続く。

「いやだなぁ〜三代目。今はもう隠居ですよ、隠居。」

ニヤリと笑ってそう言った。

「そうは言っても六代目がなぁ…。」

火影は大きくため息をついた。

「それは甘やかしすぎなんですよ。
そもそもどうしてそんなに三代目はナルトに甘いんですか?」

「うん…?まー、なんというか…。
いや、それよりおぬしの所はもう生まれたのかな?」

突然話題を切り替えられてしまう。

「えっ?!う、ウチですか…?はぁ、昨日無事に…。」

女の子が生まれましたよ、と照れくさそうに頭を掻いている。

「いやぁ、大変でしたよ…
初産の所為もあるんでしょうけど不安がって…
結局お産が終るまでずっと手を握っていましたよ。
まぁ、離してくれなかった所為でもあるんですけど。」

それにしても凄かった、と昨日の事を思い出している様子だ。

「で、名前はもう決めたのかね?」

「イエ、まだですよ。これから考えますよ…。」

女の子だからなぁ、と早くも目じりが下がっている。そんな様子に、

「なぁ、カカシよ。ワシが命令を下したらおまえの子を九尾の器として差し出せるか?」

「えっ!」

かなり驚いた様子で振り向く。

「どうだ?差し出せるか?」

しばし考え込んだ後、静かに口を開いた。

「差し出せません…たとえ三代目の命令だとしても。」

片方しか出ていない瞳にキラリと光が宿る。

「では…もしおまえが火影の時に九尾が現れていたら?ならばどうする?」

火影は新たな質問をカカシに投げかける。

「都合よく生まれて間もない捨て子の赤子が居ると思うか?」

「………。」

「ならばどうする?」

カカシは答えられなかった。

「…四代目は…自分の子を犠牲にしたんじゃよ。
ほとんど知っている物は居ないが四代目は『女』だったんじゃよ。」

「それは…事実ですか…?」

信じられない、といった表情で火影を見る。

「女、という事を知っていたのはワシと極少数の側近のみ。
極秘だったからの…おまえが知らなくともしかたあるまい。」

「じゃあ…自分の子を犠牲に…という事は…」

「そう。四代目はナルトを産み落とした後、すぐに九尾の封印を行ったのだよ…
最悪の状態で我が子を産み落とし、母らしい事をしてやる事もできず、
火影として命を落としていった…最後までナルトの事を気にかけていたよ…」

最後まで不憫な子だった…と火影は言う。
だからワシにとってナルトはもう一人の孫みたいなもんなんだよ、とカカシを見た。

カカシは言葉が無かった。
子供を産む、というのは昨日目の当たりにした。
そしてそれが母親にとってどれだけ大変で、だからこそ子供が愛しいのかを知っている。
でも、だから。他人の子供を犠牲に出来なかったのだろう。
同じ苦しみと悦びを知る母として。
そして苦しい選択が行われる。自分の子を犠牲にする、と言う。

「じゃあ、ナルトは…」

「そう、四代目の忘れ形見なのだよ…
四代目は、この子は私に似て強い子だから一人でも大丈夫…
といって息を引き取ったのじゃよ…そこからはおまえさんも知っている通りじゃ。」

あの子が言ったとおりナルトは強くなった…心身共にな…そういって火影は笑った。

「其の分たくさん苦しんできましたからね…ナルトは。」

「まぁ、ちと問題は残るがいい指導者になってきたとおもうがね…ワシは…。」

「ま、脇を固めているのがうちはサスケにサクラですからね…チームワークは抜群ですよ。」

「それにおまえも居るではないか。しっかり指導してやってくれ。
六代目はまだまだヒヨッ子だからのう。」

フォッフォッとさも楽しそうに笑っている。

「春野サクラが抜けている分しっかり指導してやってくれ…
しばらくは復帰できないだろうからな…」

「解ってますよ…なんてたって昨日は大仕事を一つこなしたんですから…」

「そうじゃ。名前に困ったらワシがつけてやるぞ。」

「…イヤ、イイデス。サクラと二人で考えますから。
四代目に負けないような素晴らしい女性になれるように。」

「この話は口外無用だからな…」

「解っていますよ…胸の内にしまっておきますよ…」

じゃ、ナルト探しに行くんで、とカカシはその場を去っていった。


「…忍、とは辛いものじゃの…。」

ポツリと火影は呟いた。





2001.3.29

過去を捏造しまくり。四代目女説&ナルト四代目実子説。
だって臍の緒と切ってすぐの赤子なんて…捨て子では難しいと思って…
ああっ…ゆーるーしーてー!

そしてカカシ先生は何故か五代目火影。奥さんはサクラ。
すべてはワタクシの妄想でございます…あしからず。