ふたりのバレンタイン作戦
ここは紫呉宅。
今日は紫呉も由希も夾も出かけていていない。

そんな日になにやら楽しそうな声が。


「どうしましょうか。」

「あのね、これ作ってみたいの。」

「どれですか?」

「これ」

そう言って雑誌を指差す。

「コレですか?」

「うん!」

かわいい笑顔を透に向ける。

「か、かわいいのです!」

そう言ってぎゅう、と杞紗を抱きしめる。うれしそうな杞紗。


場所は台所。


透と杞紗は賑やかに何かをしている。

「じゃあ、コレとコレにしましょう。」

「うん!」

「じゃあ、まず、このチョコレートを細かく刻んでください。」

「こう?」

「そうです。お上手です!」

「へへ…」

「では、今度はこれをお願いしますね。」

そう言って今度はボウルを杞紗に手渡す。

「…こうでいいの?お姉ちゃん。」

「それでいいですよ。大丈夫です。」

一生懸命ボウルと格闘している。


「それではコレにそのボウルの中身を流し込んでください。」

「うん!」

杞紗が透が用意した天板にボウルの中身を慎重に流し込む。

「できたよ、お姉ちゃん。」

「それではこれをオーブンにいれて…」

天板をオーブンの中に入れた。

「さ、こっちは後は出来上がりを待つだけです。次は…」

先ほど杞紗が刻んでいたチョコレートをボウルにいれて湯銭をして溶かす。
そこに準備しておいた生クリームなどを加え混ぜる。

「で、こうして…」

「お手伝いするよ、お姉ちゃん。」

「あ、それではそこのラップを此処に敷いてください。」

「はい。」

「ありがとうです。」

ボウルの中身をラップに流し棒状に形を整える。

「こっちもこれでいいのです。少し冷えるのを待ちましょう。」


「杞紗さんは燈路くんに差し上げるのですか?」

「うん…お姉ちゃんは?」

「わたしですか?
わたしは紫呉さん、由希くん、夾くん、はとりさん…いつものみなさんですね。」

「ふーん…そうなんだ。」

「どうかしましたか?」

「…バレンタインって好きな男のひとにチョコあげるんでしょ?」

「そうですね。」

「じゃあ、お姉ちゃんの好きな人って?杞紗は燈路くんにしかあげないよ。」

「えっ…//////あの、義理チョコといいますか…その…」

「義理チョコしかあげないの?」

無邪気に透を見上げる杞紗がいる。

「////////いいえ…」

「だれ?杞紗の知ってる人?」

無邪気だった瞳に好奇心の色が混じる。

「内緒ですよ?」

そう言って杞紗にこっそり耳打ちする。

「そうなんだ。」

「ハイ。////恥ずかしいから他の人には内緒ですよ?」

「うん!杞紗とお姉ちゃんとふたりの秘密ね。」

「それじゃ、そろそろ最後の仕上げをしましょう。」

まず冷蔵庫からラップで棒状に形を整えたチョコを取り出し一口大に切り分ける。

「さ、これにココアパウダー、コーンフレーク、好きなものをまぶしてトリュフの完成ですv」

ふたりで思い思いにトッピングを施していく。
そうしているうちにオーブンからいい香りがしてきて焼き上がりの音が響く。

「こっちも出来たのです。」

オーブンから天板を取り出すと美味しそうに焼きあがったチョコブラウニー。

「これはこうして…切り分けてあとはラッピングすればいいのです。」

出来上がったものを綺麗にラッピングしていく。

「「出来た!!」」

ふたりのこえが同時に響く。

「さ、後は当日お渡しするだけなのです!」

「ありがとう、お姉ちゃん。」


「あっ!もうこんな時間なのです!」

すでに時計の針は五時をさしている。

「もう帰るね、お姉ちゃん。今日は本当にありがとう。」

杞紗は今日、透とふたりで作ったチョコを大切に持って帰っていった。

「フフフ…燈路くん、どんな顔で受け取ってくれるのでしょうね。」

…杞紗さんと燈路くん…きっと楽しいバレンタインになるのです。



後日談。

バレンタイン当日。


「燈路くん、これあげる。」

「え?なに?俺に?」

(う、うれしい!杞紗からチョコもらった!o(>_<)o)

「じゃあ、後でね。」

「ど、どこいくの?」

「お姉ちゃんにも渡してくるの!行って来るね!」

ぱたぱたと走っていってしまった。後にはポツンと一人ぼっちの燈路。

「…やっぱりあいつはライバルだぁ〜!!」

今日も叫んでいました。^_^;



やっと書きました。杞紗の性格がちょっと。
情報が少なすぎてあんな性格になってしまいました^_^;
いまのことろ燈路くんは透くんに敵わないんじゃないかと、ラストはああなりました。
透くん。本命チョコは誰の手に?私的には夾くんだと嬉しいですが、あえて書きませんでした。
読んだ人がそれぞれで想像してみてください。

01/02/10初出